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色温度写真関連の雑誌を読んでいて、色温度という言葉に戸惑ったことがあるかと思います。 (色温度の変化)何で色に温度なんだ?
って思うでしょう。確かにややこしい表現です。 黒体 (black body) という物質を想定します。これは照射される電磁エネルギーを全て吸収し、反射も透過も しないと仮定するのですが、それ自身は輻射(電磁波を放射すること)できる物体のことです。 さて、もうこの時点で”なんのこっちゃよーわからん”状態かもしれませんが、 ようするに、エネルギーを全部吸収して、自分の温度によって表面からエネルギーを放出 するということです。
具体的には、鉄でできた(なんでもいいのですが)空っぽの箱を準備します。 この意味で、全てのエネルギーを吸収するということです。 エネルギーを吸収するので、当然温度が上がってきます。物体は温度を持つと電磁波を 輻射しはじめます。温度が低いと赤外線やもっと波長の長い電磁波を出すので人間の目では 関知できず、黒く見えるのです。黒体の名の由来です。
身近な例を紹介します。車に警察のねずみ取り対策の赤外線探知機(ピーと鳴るやつ)を
つけていると、エンジンを始動したとき、鳴り始めることがあると思います。 さて、どんどんエネルギーを注いでいくと、どんどん温度もあがり、輻射する電磁波の 波長も短くなってきます(波長が短いほど、輻射するエネルギーは強くなります)。 自分自身は輻射できるとはこの意味です。 温度が高くなるに連れて、色の方も、 赤 、 オレンジ、 黄色、 白、 青、 紫外線 とどんどん 変化していきます。 石油ストーブ(最近はあまり見ませんが、昔お餅をやいていたやつです)が、点火すると だんだん赤みを帯びていくのと同じ現象です。
さらにややこしく従って、 暖色系 のいろ(赤やオレンジ、黄色など)ほど色温度は低く表現され、 寒色系(青色系統) ほど色温度は高く表現されるのです。ですから、日中の日向の光は、色温度の低い色が支配的になり、逆に、日陰の薄暗い ところは青みの帯びた光が多くなるため色温度は高くなります。
ややこしいですね。 例えば、ストーブの色は赤で、ガズバーナーの色は青色だから、青のほうが色温度は 高いくらいに大雑把に捕らえておけばいいと思うのです。
青い色だから、その物や周りが熱いわけではありません。 余程シビアな商品撮影や風景写真などを撮るのでなければ、だいたいの理解で 十分だとおもいます。 Kってなに?色温度の表示に、4000K とか書いてありますが、この単位の K は、絶対零度 (大体、マイナス273度)をゼロとした温度の単位で、ケルビンと読みます。余談ですが、このケルビンもややこしいのです。 このケルビンは、イギリスの物理学者の名前なのですが、この物理学者はウィリアム トムソン といいます。後に男爵に叙せられ、なじみの深い川の名前をとって”ケルビン卿”と呼ばれる ようになったためこの名前がついたのです。 もう一つおまけ黒体の研究を行ったのは、マックスプランクという物理学者で、1900年頃に量子の概念を 導入して輻射の理論を確立しました。この過程で、有名なアインシュタイン博士なども 大変な業績を残しており、光量子仮説の研究でアインシュタインはノーベル賞を受賞しました。 (相対性理論ではありません。)また、現在のカメラに当たり前のように備わっているオートフォーカス(全自動でピントを 合わせる機構)は、このアインシュタイン親子(有名なのは息子の方)が発明したものです。 プランクは、プランク定数として、現代物理とは切っても切れない重要な数値の名前として 名前が残っています。 ややこしい話、ご静聴ありがとうございました。
なお、黒体の輻射エネルギーは温度の4乗に比例します。 図では、それぞれの曲線の囲む面積になります。温度の高い方が、より多くエネルギーを 輻射していることがわかりますね。 |